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第87回全日本学生ヨット選手権大会#2



お世話になっております。2回生470スキッパーの抜井です。

まず、ブログの提出が大幅に遅れてしまったこと、大変申し訳ありません。ブログ担当に指名されてからしばらく何をどう書くか相当に悩み、書き始めたら書き始めたでいろいろな思い出やそれに付随する感情があふれてきて、なかなか書き進められずにいました。最終的に、2回生で470チームの1番艇スキッパーという私なりの視点から、インカレを目指してもがき続けた1年間を振り返るという、かなりボリューミーなブログになってしまいましたが、しばらくの間お付き合いいただけると幸いです。


ちょうど1年前の代交代直後、87代の先輩方が掲げた目標は「470級6位入賞、スナイプ級優勝、総合3位入賞」というものでした。470級10位、スナイプ級4位、総合5位という2021年のインカレの結果を思えば、背伸びした目標だなあという印象は否めませんでしたが、それよりも、このチームならいけるんじゃないかという期待感のほうが、自分の中では大きかったように思います。しかし、直近数年間のインカレの結果を分析する中で見えてきた現実は、予想以上に厳しいものでした。470に関して言えば、6位入賞ラインである「3艇の合計得点が1レース平均75点」を達成するには、目安として1, 2, 3番艇の1レース平均がそれぞれ15, 25, 35点である必要があります。しかし去年の結果は、それぞれ18, 39, 49点。これは、1番艇が去年と同等以上に走ることを前提に、2, 3番艇が大幅にレベルアップしなければならないことを示すデータでした。一方で代交代後のチームは、インカレを経験した古澤、抜井、實松、奈良の4人以外はビッグフリートでのレース経験もほとんどなく、3番手スキッパー・クルーがともに不在という状況でした。この状況を打開すべく、3番艇育成を中心としたチーム全体のレベルアップを目指し、新体制がスタートしました。


過酷な春合宿を乗り越え6月頃から本格的に始まったレースシーズンは、470チーム全体としてリコールの多さが非常に目立っていました。単純なスタート技術の低さだけでなく、スタートシークエンス中に有利サイドが逆転してしまうほど大きくフレる琵琶湖特有の風、激しい3番艇争いを制するために攻めたい気持ちなど、色々な要素が重なった結果ではありますが、それにしても多すぎました。ただこのタイミングで、カットレースがない団体戦ではリコールが命取りになるという事実を再共有し、リコールに対する危機意識をチームで高められたことは、間違いなくその後の団体戦につながったと思います。しかしチームとしては、全日本470の枠を獲得したのが抜井、古澤だけ、そして個人戦予選に至っては全艇が枠を逃すなど、かなり苦しい状況が続きました。これを受けて配艇が組み直され、去年のインカレ出場ペアである古澤・實松、抜井・奈良の再結成が決まり、七大戦にはこの2ペアをスタメンとして出場しました。その七大戦で470、総合ともに優勝できたことは、今年のチームにとっては一つの大きなポイントだったかなと思います。レースメンバーとサポートメンバーが一体となってチームのために動く経験、そしてチームの勝利をみんなで喜び合う経験によって、部全体の結束感や団体戦に対する意識が高まったように感じました。


8月中旬から始まった夏合宿は、レースシーズンの課題だったスタートと、470チームの弱点であるクローズのコースどりのレベルアップを目標に、スタート練習やコース練習を中心に行いました。また、琵琶湖開催の団体戦本戦を見据えて琵琶湖の風の傾向をつかもうと、スナイプチームと合同で風ミーティングを開催したり、470チーム内でもこれまで以上に積極的に情報交換をしたりと、風分析に努めました。琵琶湖の風は難解すぎて攻略には程遠かったですが、それでも少しずつその風のセオリーを構築していくことで、コースの精度は向上したように思います。そんな中、中村・保家、小澤・赤城、中辻・小島による3番艇争いは激化していて、練習やポイントレースにもいつにない緊張感がありました。当事者にとってはとても苦しい期間だったと思いますが、結果的にはその競争がチームのレベルを高め、本戦に出場できるレベルの艇が5艇そろっているという層の厚さを実現できたのだと思います。実際、夏合宿終盤に行われた団体戦予選では5艇10人全員がレースに出場しました。結果は3位でしたが、去年は1位と1レースで10点差をつけられていたのが今年は4点と、確実にチームとして成長していることを実感できたレースだったと思います。


予選後から本戦までの1か月はあっという間でした。それまでの遠征の結果や各水域の予選結果から推測する限り、6位入賞は達成できるかどうかギリギリのラインで、全艇が実力を十分に発揮することが入賞の最低条件でした。そのため、練習中は常に「インカレで再現できるかどうか」というポイントを意識していました。再現性の高いスタート位置、ファーストタックのタイミング、クローズやランニングのコース選択といったことを考えながら、他大学との合同コース練などを通して最終調整を進めました。その間も、3艇による3番艇争いは相変わらず拮抗していました。最終的なスタメンが発表されたのはインカレ前日。選ばれたメンバーと選ばれなかったメンバー、それぞれ思うところは山ほどあっただろうと思いますが、少なくとも私は、ここまで一緒に練習してきたこのメンバーなら、どのペアが出てもきっと大丈夫だと、素直に信じることができました。同時に、強いものが勝つのではない、勝ったものが強いのだ、そんな言葉を思い出しました。自分たちに6位入賞の実力があるかどうかは分からないけれど、この目標を達成することで、このチームで過ごした1年間が間違っていなかったと証明したい、そう思いました。


そして、ついにインカレ初日を迎えました。長い風待ちの後弱めの北風が入り始め、思ったよりあっさりとレースが始まりました。大事な第1レース、前日にスタメンを勝ち取った小澤・赤城ペアがスタートを決め、期待を大きく上回る19位でフィニッシュ、1上でかなり出遅れた抜井・奈良、古澤・實松ペアも気合いの追い上げを見せ、チームとしてほぼ目標通りの合計76点にまとめました。このとき、ぼんやりと抱いていた「このチームなら入賞できる」というイメージが、自分の中でほぼ確信に変わったことを覚えています。このレースの展開は、1上を前で回っても前でフィニッシュできない・1上で叩いたときに追い上げることができないという1年前のそれとはまるで違っていました。この1年でこのチームは確実に強くなったんだと実感しました。続く第2レースは13-17-26の合計56点と、第1レースを上回る会心のレースで、結果的に470チームは初日6位という上々のスタートを切ることができました。しかし7位以下との点差が開いているわけではなく、また総合は目標としている3位と約50点差の6位ということで、強風予報の2日目が勝負になると、部員一同気を引き締め直しました。


2日目は、1日全体を通して風向が三井寺から北西までまわり、定期的に山のほうから強烈なブローが降りてくるという、フレ・強弱ともに非常に激しい難しいコンディションでした。470チーム全体として若干苦手としているフルパワーからオーバーのレースも多かったですが、抜井・奈良ペアが13-28-14-4、古澤・實松ペアが26-27-16-28とほぼ目標通りのスコアにまとめ、小澤・赤城ペアと中辻・小島ペアが交互に乗り替わった3番艇も大崩ししない粘りの走りで、暫定5位に浮上しました。帆走力でまだ強豪校には及ばない強風のレースで耐えられたことは、470チームとして大きな前進であるとともに、6位入賞がぐっと近づいたという点で大きな意味があったように思います。またこの日は、強風を得意とするスナイプチームが驚異の合計10点を筆頭に爆走し、総合でも3位に浮上しました。折り返し時点で目標に手が届いているというかつてない状況に、チームが盛り上がり、一つになっている感覚がありました。


3日目は北風の微風で2レースが行われました。第7レースで古澤・實松ペアが9位、第8レースで小澤・赤城ペアが10位と快走、第7レースがインカレ初レースとなった中村・保家ペアはペナルティーの履行で6回転するという想定外に見舞われながらも執念の追い上げを見せ、470チーム全体としては77-57という安定したスコアで5位をキープしました。総合も4位の関学とわずか7点差ながら3位を保ち、これ以上ない形で最終日を迎えることができました。


そして最終日。微かに入ってきた風で出艇したもののその風もすぐに消え、しばらく沖での待機が続きました。ヨット6艇とレスキュー2艇で連結し、レースメンバー・サポートメンバー入り乱れて会話しつつ、内心レースがあってほしいようなあってほしくないような複雑な気持ちでした。そんな気持ちを知ってか知らずか、風が入ってくる気配は一向になく、11時40分、インカレの終わりを告げるAP/A旗が掲揚され、470級5位、スナイプ級3位、そして総合3位が決まりました。いつの間にかまわりに京大の観覧艇も集まっていて、現役・コーチ・OB一体となってみんなで総合3位を喜ぶ姿に、こんなにもたくさんの人たちに支えられていたんだなあということを実感するとともに、ここまで頑張ってきて良かったなあと強く思いました。個人的には、その後彩雲でハーバーまで曳航したときのことが忘れられません。見慣れた琵琶湖の景色、見慣れた背中、すぐ横や後ろには4日間ともに戦い抜いた仲間がいて、471と48のマストトップには部旗が掲げられ、観覧艇が写真をとりながら並走している、そんな日常と非日常が混じり合った光景を見ながら、凄いことをやってやったぞという達成感と、4回生と一緒に目標を追いかける日々が終わってしまう寂しさで胸がいっぱいになりました。もう一つ私の中で忘れられないのが、閉会式後の田中監督の挨拶です。「監督としては、スナイプチームが引っ張る形でのこれまでの総合入賞もうれしかった一方で、470チーム出身のOBとしては、京大はスナイプのチームだと言われるのがすごく悔しくて、今年、470・スナイプ両方の活躍によって総合3位を達成できたことがとてもうれしい」といった趣旨のことを涙ながらに話す監督を見て、京大470チームが6位入賞という壁を破ったことの価値を改めて実感し、チームの一員として誇らしさを感じると同時に、苦しみながらも必死に進んできたこの1年を肯定してもらえた気がして、危うくもらい泣きしそうになりました。


そんなふうにして今年のインカレは、長年届かなかった470級入賞・総合3位入賞を同時に達成し、京大470チームとしても京大ヨット部全体としても、大きく前進することができました。そしてこの結果はまさに「総合力」で勝ち取ったものだと思います。神谷コーチをはじめいろいろな人の口から何度も「インカレは総合力だ」ということを聞き、個人としても去年のインカレを通してそれは実感していたつもりでしたが、今年、4日間にわたって、クラス・総合ともに入賞できるかどうかギリギリの戦いを繰り広げる中で、改めてその言葉の意味を強く実感しました。実際、総合4位との差である7点が、1艇でも出着艇申告を忘れたらひっくり返る点差であることが象徴するように、ヨットの世界では1点の積み重ねが勝敗を分けます。1上が悪くても必死に追い上げたレースメンバー、他大の回転不足を見抜いた沖サポートメンバー、申告類を完璧にこなした陸サポートメンバー、数え始めればキリがないですが、それぞれが自分の役割を確実に果たし、全員で1点を削り出し続けたからこそ、この結果につながったのだと思います。また結果以上に、それぞれがいろいろな気持ちを抱えながら、それでも同じ目標に向かって走り続けたこの4日間は、本当に濃くて充実した時間でした。改めて、一緒に戦った現役、背中を押してくださった監督・コーチ・OBの方々、京大ヨット部に関わってくださったすべてのみなさんに、心から感謝の気持ちでいっぱいです。そして何より、このチームを高みに引っ張り上げ続けてくれた87代の先輩方には、感謝してもしきれません。本当にありがとうございました。


ここまで、87代率いるチームでの1年間を振り返ってきましたが、実はもう88代による新体制がスタートしています。今年の結果が京大ヨット部として大きな一歩であったことは間違いないですが、京大ヨット部は現在進行形で成長中のチームであり、ここはまだ通過点に過ぎません。先輩方に見せていただいた景色を糧に、さらに上のステージに上がれるよう、部員一同より一層練習に励んでまいります。OB、保護者の方々におかれましては、今後とも変わらぬご支援、ご協力のほど、よろしくお願いいたします。


最後になりますが、難しいコンディションにもかかわらず素晴らしい大会を運営してくださった大会関係者のみなさま、睡眠時間を削って大会のために動いてくださった学連の方々に、心から感謝申し上げます。本当にありがとうございました。


京都大学体育会ヨット部

89代470スキッパー

抜井理紗

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